ワインとチーズマニアの翻訳者日記

ワインとチーズに目がない英日翻訳者の記録です。チーズ、ワイン関連の書籍や関連記事の訳文を紹介します。

昨年の反省&今年やりたいこと

年が明けて9日めにこんなことを書くのはやや遅いのですが、久しぶりにきちんとブログを書きたくなり、それならば年頭にふさわしいテーマでびしっと決めたいという欲望が募り、このようなテーマをぶちあげました(というほど壮大なテーマではないですが……。)

まず昨年、2017年をざっとふり返ってみると

2017年1月~2月初旬 前年11月からひきつづきウイスキー書籍の翻訳

2月初旬~月末 同書の再校

3月~4月8日 ワイン書籍の下訳

5月GW明け~8月10日 ビール書籍の翻訳

8月下旬~9月10日 同書の再校

12月初旬の10日間 ワイン書籍のリーディング

 

このようにほぼ途切れなく書籍翻訳の仕事に恵まれ、ひじょうに充実した日々でした。ただ、一日の仕事量を計画とおりにこなすことがひじょうに難しく、予定量に届かない日が増え、岸の見えない遠泳を続けているような、しかもときおり力尽きて沈みそうな気分になりながら日々を過ごしていました。

その結果、心身ともに疲弊してしまい、少し歩くだけでも疲れてしまうほどに。入稿した9月10日以降はパソコンの前にすわることもいやになり、可能なかぎりパソコンを開くのを避け、人に会う機会(飲み会)と読書に明け暮れていたように思います。つくづく、書籍翻訳をこなすには、翻訳力もさることながら、数カ月間にわたって集中を切らさない気力と体力が必要であることを、思い知らされました。

 

「まずい、このままでは社会復帰できなくなる……」と、さすがに不安になったころに実務翻訳の仕事やワイン書籍のリーディングのお仕事をいただけたことにはほんとうに感謝しています。それがなければもしかしたらいまもぼーっと過ごしていたかもしれません。特にワイン書籍は、つね日ごろ自分が気になっていたテーマに沿った内容だったため、仕事であることを忘れて、読みふけってしまいました。やはりワインをテーマとした本はおもしろいです! どうかあの本が日本語に訳される日が来ますように。そしてできれば私めにその役目を任せてもらえますように! その日に備えて、買いだめておいたワイン書籍をかたっぱしから読みまくっています。

『マット・クレイマー、ワインを語る』

『新しいワインの科学』

アンリ・ジャイエのブドウ畑』などなど……。

 

さて本年の計画ですが……。

計画する前に、やりたいことを並べてみます。

・レジュメ作成予定の本の翻訳:全文は無理としても半分まで訳す 3月いっぱいまで

・参考にしたい翻訳書と原書の読み比べ(これは昨年から続行中)

・体をきたえる:せめて週に2日はウォーキングをする

・読書量を増やす:一日に最低30分は読書する時間を確保する

・ブログを週に最低一度は更新する:チーズやワイン関連の記事を翻訳して掲載する

 

こんなところでしょうか。どうにも自分を甘やかしがちな性質ですが、これからも翻訳という、大好きな仕事で生きていくために、ここに掲げた項目をなんとか実行していきたいと思っています。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

「世界から見る日本のビール、日本から見る世界のビール」 『世界のビール図鑑』刊行記念のお知らせ

新しい翻訳書の案内と出版記念イベントのお知らせをします。この1月にガイアブックスより『世界のビール図鑑』が発売されます。

本書は、ドイツ、イギリス、チェコ、アメリカなどのビール伝統国やビール大国だけでなく、南アフリカベトナム、中国、そして日本など、世界のあらゆる国々と地域のビールの歴史と最新事情を詳しく解説しています。ビールの製造方法の図解やビールの種類ごとの注ぎ方と保存方法、料理との合わせ方などの実用的な知識も網羅しており、ビールのすべてを知ることのできる決定版です。

本書の発売を記念し、2018年1月24日(水)に、東京・下北沢の『B&B』にて、「村松静枝×熊谷陣屋×山田司朗 『世界から見る日本のビール、日本から見る世界のビール』 『世界のビール図鑑』刊行記念 」イベントが開催されます。本の販売も行います。

村松静枝×熊谷陣屋×山田司朗 「世界から見る日本のビール、日本から見る世界のビール」 『世界のビール図鑑』刊行記念 | 本屋 B&B

【開催概要】

出演:山田司朗 熊谷陣屋  村松静枝

時間 _ 20:00~22:00 (19:30開場)
場所 _ 本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
入場料 _ 1500yen + 1 drink order

チケットのご予約はこちらからお願いいたします。

passmarket.yahoo.co.jp

bookandbeer.com

『世界のビール図鑑』翻訳出版記念イベントのお知らせ

ずいぶん間があいてしまいましたが、新しい翻訳書の案内と出版記念イベントのお知らせをします。この1月にガイアブックスより『世界のビール図鑑』が発売されます。

本書は、ドイツ、イギリス、チェコ、アメリカなどのビール伝統国やビール大国だけでなく、南アフリカベトナム、中国、そして日本など、世界のあらゆる国々と地域のビールの歴史と最新事情を詳しく解説しています。ビールの製造方法の図解やビールの種類ごとの注ぎ方と保存方法、料理との合わせ方などの実用的な知識も網羅しており、ビールのすべてを知ることのできる決定版です。

本書の発売を記念し、2018年1月20日(土)に、静岡県静岡市葵区の「ビールのヨコタ」にて

『世界のビール図鑑』発売記念 ビール特別講義(2部構成)が開催されます。本の販売も行います。

【開催概要】
日時:2018年1月20日(土)
第1部:『世界のビール図鑑』発売記念特別講義 14:00~15:30(13:30~受付)
第2部:ビールと寿司と醤油のマリアージュ 16:00~17:30(15:30~受付)
場所:ビールのヨコタ
住所:静岡県静岡市葵区呉服町2-5-22 ソシアルカドデビル 2F
JR静岡駅から徒歩10分
電話番号:054-255-3683
URL: http://beer-yokota.com/
参加費:
第1部 2000円(1ドリンク込み)
第2部 4000円(前日までに店頭で現金払い。完全前金制です。止むを得ない理由がある方はご相談ください)
※ビアコーディネイター資格をお持ちの方は、第2部の参加費を500円割引いたします。

※第2部は、仕入れの都合上、参加受け付けは1月18日22時までです。サビ抜きの希望もここまでお知らせください。
※店頭でも募集をしているため、予告なく定員を締め切る可能性があります。予めご了承ください。
※キャンセル料について…2日前は各参加費の50%、前日80%、当日100%ご負担とさせていただきます。
【お申し込み方法】
facebookページの「参加」を押していただいた上、参加を希望する部をこのページに投稿してください。もしくはビールのヨコタの店頭・電話にて。

https://www.facebook.com/events/1147822275320961/?active_tab=about

訳書を紹介させてください:『The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド』

久しぶりの投稿となってしまいましたが、今日は拙訳書を紹介させてください。

『The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド』日本文芸社

カラフルでわかりやすい図説とイラストが満載の、読み手に優しいワイン教科書です。

お好きなワインをかたわらにおいて楽しくページをめくっていただければうれしいです。

*「洋書の森」ブログでご紹介いただきました。ありがとうございます!

blog.goo.ne.jp

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Champagne: A Global History”  『シャンパンの歴史――黄金の泡が秘めた物語』 3章 シャンパン産業の確立と発展①

 1700年代なかばから1800年代にかけて、シャンパンは商人による小規模な商いから一大産業へと発展していった。その陰には化学や生物学の発達と機械化の進歩があっただけではない。市場調査と宣伝活動の重要性をつねに念頭においていたことも、産業としての発展を後押しした。1800年代に入る前、多くの新参者たちがこの新たな商売に賭けようと打って出た。ルイナールとゴッセといった草分け的な生産者に加えて、1743年にモエ・エ・シャンドン、1757年にアンリ・アベレ、1760年にランソンとドゥラモットが創立された。つづいてヴーヴ・クリコが1772年、ロデレールが1776年、そしてパイパー・エドシックが1785年に操業を始めた。いずれもこんにちよく知られた老舗のメゾンである。こうした生産者たちは毎年つねに同じブドウ畑のブドウを使うようになった。ブドウ栽培者の技術はもちろんのこと、畑の土壌と向きが、ブドウの安定した品質に反映することを熟知していたのだ。

 

 黎明期のシャンパンを飲むのはいったいどんな感じだったのだろう。ごくまれに難破船から見つかる場合を別とすれば、現在では安心して口にできる古いボトルは残っていない。何十年かもちこたえるシャンパンもあるにはあるが、さすがに何世紀も品質を保つようにはつくられていない。ましてやスパークリングワインなのだから、泡が残っているはずがない。そうはいうものの、数世紀前のシャンパンがどのようにしてつくられ、どんな色をしてどんな味がしていたのかはわかっている。

 

 18世紀から19世紀にかけてのワインと同様、シャンパンもかすかに甘口だった。実をいえば、少しばかり甘口のワインのほうが、食べものとの相性ははるかによくなる。ほのかに甘口のワインは“オフドライ”ワインともよばれ、いろんな料理の風味を引き立たせてくれる。初期のシャンパンはたいてい明るい赤色、あるいはサーモンピンクやピンク、バラのような色合いだった。これは、シャンパンをつくるとき黒ブドウを軽く圧搾するだけだったため、皮の色はうっすらとワインに加わる程度だったからだ。

 

 泡はどうだったかというと、さまざまで安定していなかった。フランス語でシャンパンはpétillant, demi-mousseux, mousseux,grand mousseuxとよばれる。それぞれおおまかに訳せば、微発泡、半発泡、発泡、超発泡となる。泡の量はボトルのガス圧に左右された。初期の技術ではせいぜい3気圧程度で、現在の半分程度だった。

 

 初期のシャンパン用グラスは円すい型でステム(脚)がなく、ボウル部分と台座のフット部分が、じかにつながっていた。18世紀の後半になると、飲み口が大きく、浅型でステム付きのクープグラスが登場し、おおいに人気をよんだ。このグラスはフランス宮廷のさる高貴な女性の胸をかたどったものといわれ、ポンパドール夫人からマリー・アントワネットまで、どの説を信じるかはお好みしだいだ。このクープグラスは19世紀から20世紀のほぼ全般にわたって、シャンパングラスの定番として君臨した。

『キプロスのハルミチーズをめぐる攻防 その後』

*前回取り上げた、キプロスハルミチーズのDPO申請のその後についての記事を訳してみましたが、ここで語られる「キプロス問題」に悩みました。というのも、キプロス問題というと、1974年のクーデターによって起こった、南部ギリシャ系のキプロス共和国(キプロス:2004年にEU加盟)と、北部トルコ系の北キプロス・トルコ共和国(北キプロス:トルコのみが国家として承認)の分裂状態を示すのですが、検索してみると、2013年の金融危機も挙げられるため、この記事に書かれた「いわゆるキプロス問題」がどちらを示すのか、それとも両方含まれるのか、悩ましいところで、もっと調べたいのですが、そうすると本題がチーズから離れていってしまいそう。いずれにしても、小さなチーズの呼称保護の背景には、根深い政治問題が見え隠れしているようです。

  

ハルミチーズ申請の陰にキプロス問題あり

                              2015年 10月29日

Cyprus problem serves as deterrent against halloumi objections

                            OCTOBER 29TH, 2015

 

いわゆる「キプロス問題」が、現在、キプロス共和国がEUに申請中のハルミチーズのPDO(原産地呼称保護)認定に反対する勢力を押しとどめる効果を発揮している、と同国のニコス・クヤリス農業大臣がこの29日に語った。

現状、いくつかの団体がキプロスのPDO申請に抗議する意向を示している。英国政府の支援を受けている同国の生産者組織がひとつ、そしてアメリカとオーストラリアでハルミチーズを取引している企業が1社ずつ、名のりを挙げている。

クリヤス農業大臣は他の反対勢力の存在についてもほのめかした。少なくともニュージーランドの一企業が、申請に反対してくるだろうといわれている。

こうした企業には2カ月の猶予が与えられ、この間に、キプロスの申請への異議を申し立てることができる。すべての事務手続きは半年以内に終了する。

クリヤス農相によれば、EU加盟国である以上、英国政府は法規に従って、表向きは自国の生産者組織を支援せざるを得なかったのだという。さらに、英国の反対意見書には別の文書が添付され、「ハルミチーズの件は信頼醸成措置の一環となり、事態の解決に寄与するものであること、および英国はいかなる問題も起こす意向はない」という旨が記されていた、という。

ニュージーランド政府からも文書が届き、同国政府にはいかなる抗議も後押しする意向はないが、民間企業による直接抗議を防ぐことは不可能だったと記されていた、とクリヤス農相は語る。

「反対行動を支援できない国が多いのは、きっと(キプロス問題)のためだろう」一連の抗議は予想がついていたため、あまり意に介していないと農相は語り、ハルミが何百年以上もこの島でつくられてきた、キプロス伝統のチーズであるという確固たる事実に基づいて問題に取り組んでいくつもりだ、とつづける。

 

 キプロスは昨年、EUにたいしてハルミ/ヘリムチーズのPDO認定を申請した。今年の7月28日、欧州委員会はこのPDO申請案件をEUの公式機関誌に掲載し、3カ月にわたって、キプロスに居住しない個人および法人の異議申し立て受け付けると発表した。

 欧州委員会の委員長を務めるジャン=クロード・ユンカー氏はキプロスの申請にたいして肯定的だ。この7月にキプロス島を訪問したユンカー氏は、キプロス共和国のニコス・アナスタシアディス大統領および北キプロス・トルコ共和国の指導者ムスタファ・アクンジュ氏と会談した。その際ユンカー氏は、北キプロス・トルコ共和国のハルミ生産者に関する問題の解決に向けて助け船をだしている。

 

以上キプロス・メイル

http://cyprus-mail.com/2015/10/29/cyprus-problem-serves-as-deterrent-against-halloumi-objections/ より

 

キプロス共和国の大統領および農業大臣の名称の読みかたは在ギリシャ日本大使館のサイトを参照しました。

http://www.gr.emb-japan.go.jp/portal/jp/cyprus/government.htm

 

 

『キプロスのハルミチーズをめぐる攻防』   

*「シャンパン歴史物語」を少しおやすみして、チーズ関連の記事を翻訳してみました。

 

キプロスのハルミチーズをめぐる攻防』             2014年7月10日

遠からず、「ハルミ」という呼称は、地中海の島国キプロス産の、かむとキュッキュと音がするチーズに限定されるようになるかもしれない。この7月9日、キプロス政府がハルミチーズを、EUが制定するPDO(原産地呼称保護)製品として認定するよう申請したのだ。(訳注:ハルミチーズは牛乳、山羊乳、羊乳の混合乳製である)

 

 ハルミのPDO認定はこれまで長いあいだ待ち望まれていたが、当のチーズ生産者たちが、EU当局から提案された山羊乳と羊乳の混合割合に反対してきた。キプロスでは山羊乳の生産量が少ないため、EUから提示された「山羊乳51パーセント以上とする」という認定条件は現実的ではないと訴えていたのだ。

 

今回の申請案では、山羊乳と羊乳の割合が50パーセント以上と制定され、ハルミチーズ生産者にたいしては、この変更に対応するため10年の猶予期間が与えられている。猶予期間は7月9日に始まり、生産者はこの間、最大80パーセントの割合まで牛乳を使用してハルミチーズを製造することが許される。このチーズのトルコ語名称「ヘリム」を使って販売することもできる。

 

キプロス・メイル」紙によると、同国の農業・資源・環境大臣ニコス・クヤリス氏は、生産者と酪農家が新基準に適応しやすくなるよう、一連の事業支援策も発表したという。その内容は、既存の酪農家の現代化や新規の酪農場の立ち上げに資金援助をするというもので、ハルミチーズの生産設備の改善も援助の対象になっているという。

http://culturecheesemag.com/cheese-bites/cyprus-applies-for-halloumi-pdoより

=訳文以上=

これは1年以上前の記事ですが、その後キプロスの「ハルミ」呼称はどうなったのでしょうか。調べてまた掲載したいと思います。呼び名はどうあれ、キュッキュと独特の食感をもつハルミチーズはそのままでもおいしいのはもちろんですが、焼いても溶けないため、フライパンでこんがり焼いてパンにはさんだりサラダに加えたりと、いろんな食べ方を楽しめます。味にさほどクセがないので、チーズ初心者の方にもお勧めです。

 

キプロスの大臣名称は在ギリシャ日本国大使館 キプロス関連を参照しました。