ワインとチーズマニアの翻訳者日記

ワインとチーズに目がない英日翻訳者の記録です。チーズ、ワイン関連の書籍や関連記事の訳文を紹介します。

映画鑑賞記録 『グリーンブック』

またも間があいてしまいました。

先日鑑賞した『グリーンブック』は今年度アカデミー賞の作品賞に輝いた作品です。

あらすじは以下の通り。

”時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるトニーは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが……。“(HPより)

ガサツで差別意識の持ち主ではあるけれど根は優しくて卑怯な行動と理不尽を嫌うトニーと、異様なほど潔癖症で繊細なドクター。まるで正反対の二人は人種差別が特に激しいディープサウスへの演奏旅行を進めるにつれて、心を通わせていく。

――今までにもこの手の映画はあったし、話の展開はほぼ予想通りだった。途中ややだれ気味で、130分という時間は少し長すぎるようにも感じたけれど、鑑賞後はあたたかい気持ちになれて、よい作品だったと思う。なにより二人の人物像に魅力があった。ピアノ演奏シーンでは映画館というよりコンサート会場に来たような臨場感ある音に包まれたし、特に旅先のバーで地元のバンドと即興演奏を奏でる場面では自然に体がリズムをとるほど心踊った。ただ、新鮮味は感じられなかった。それでもこの作品はアカデミー賞の作品賞に選ばれている。なぜだろう。

きっとアメリカには定期的にこういう映画が必要なんだろうと思う。特にトランプ大統領の就任以来、国民の間の分断があらわになってしまった今という時代には、こういう作品を作り、鑑賞することによって、深い溝をなんとか埋めたいという気持ちが、誰に指図されるでもなく、おのずと人々のなかに生まれてくるのではないだろうか。そう考えると、アメリカの人々がこの映画に寄せる思いは、かの国に暮らした経験もない日本人の私が容易に想像できる類いのものではない。分断は一朝一夕で埋まらないけれど、この映画でかの国の人々が少し優しい気持ちになれたらいいと思う。根拠のない憎悪から放たれて、隣人同士で握手、あるいはハグしたくなるような気持になれたならいい。

ところで映画が終わりエンドロールが流れるなか、驚愕の事実に気づき、椅子からずり落ちそうになった。何と、トニー役を演じていたのはヴィゴ・モーテンセンだったのだ。彼の顔は知っていたのに、鑑賞中まったく気づかなかった。髪をオールバックにして顔も体もムキムキというかむちむちに太った彼の姿は『ロード・オブ・ザ・リング』のころとはまるで別人。役作りのために太ったのかそれとも加齢による変化なのか、とにかく驚いた。

f:id:cheesetrans:20190306193642j:plain

f:id:cheesetrans:20190306193659j:plain