ワインとチーズマニアの翻訳者日記

ワインとチーズに目がない英日翻訳者の記録です。チーズ、ワイン関連の書籍や関連記事の訳文を紹介します。

『キプロスのハルミチーズをめぐる攻防 その後』

*前回取り上げた、キプロスハルミチーズのDPO申請のその後についての記事を訳してみましたが、ここで語られる「キプロス問題」に悩みました。というのも、キプロス問題というと、1974年のクーデターによって起こった、南部ギリシャ系のキプロス共和国(キプロス:2004年にEU加盟)と、北部トルコ系の北キプロス・トルコ共和国(北キプロス:トルコのみが国家として承認)の分裂状態を示すのですが、検索してみると、2013年の金融危機も挙げられるため、この記事に書かれた「いわゆるキプロス問題」がどちらを示すのか、それとも両方含まれるのか、悩ましいところで、もっと調べたいのですが、そうすると本題がチーズから離れていってしまいそう。いずれにしても、小さなチーズの呼称保護の背景には、根深い政治問題が見え隠れしているようです。

  

ハルミチーズ申請の陰にキプロス問題あり

                              2015年 10月29日

Cyprus problem serves as deterrent against halloumi objections

                            OCTOBER 29TH, 2015

 

いわゆる「キプロス問題」が、現在、キプロス共和国がEUに申請中のハルミチーズのPDO(原産地呼称保護)認定に反対する勢力を押しとどめる効果を発揮している、と同国のニコス・クヤリス農業大臣がこの29日に語った。

現状、いくつかの団体がキプロスのPDO申請に抗議する意向を示している。英国政府の支援を受けている同国の生産者組織がひとつ、そしてアメリカとオーストラリアでハルミチーズを取引している企業が1社ずつ、名のりを挙げている。

クリヤス農業大臣は他の反対勢力の存在についてもほのめかした。少なくともニュージーランドの一企業が、申請に反対してくるだろうといわれている。

こうした企業には2カ月の猶予が与えられ、この間に、キプロスの申請への異議を申し立てることができる。すべての事務手続きは半年以内に終了する。

クリヤス農相によれば、EU加盟国である以上、英国政府は法規に従って、表向きは自国の生産者組織を支援せざるを得なかったのだという。さらに、英国の反対意見書には別の文書が添付され、「ハルミチーズの件は信頼醸成措置の一環となり、事態の解決に寄与するものであること、および英国はいかなる問題も起こす意向はない」という旨が記されていた、という。

ニュージーランド政府からも文書が届き、同国政府にはいかなる抗議も後押しする意向はないが、民間企業による直接抗議を防ぐことは不可能だったと記されていた、とクリヤス農相は語る。

「反対行動を支援できない国が多いのは、きっと(キプロス問題)のためだろう」一連の抗議は予想がついていたため、あまり意に介していないと農相は語り、ハルミが何百年以上もこの島でつくられてきた、キプロス伝統のチーズであるという確固たる事実に基づいて問題に取り組んでいくつもりだ、とつづける。

 

 キプロスは昨年、EUにたいしてハルミ/ヘリムチーズのPDO認定を申請した。今年の7月28日、欧州委員会はこのPDO申請案件をEUの公式機関誌に掲載し、3カ月にわたって、キプロスに居住しない個人および法人の異議申し立て受け付けると発表した。

 欧州委員会の委員長を務めるジャン=クロード・ユンカー氏はキプロスの申請にたいして肯定的だ。この7月にキプロス島を訪問したユンカー氏は、キプロス共和国のニコス・アナスタシアディス大統領および北キプロス・トルコ共和国の指導者ムスタファ・アクンジュ氏と会談した。その際ユンカー氏は、北キプロス・トルコ共和国のハルミ生産者に関する問題の解決に向けて助け船をだしている。

 

以上キプロス・メイル

http://cyprus-mail.com/2015/10/29/cyprus-problem-serves-as-deterrent-against-halloumi-objections/ より

 

キプロス共和国の大統領および農業大臣の名称の読みかたは在ギリシャ日本大使館のサイトを参照しました。

http://www.gr.emb-japan.go.jp/portal/jp/cyprus/government.htm